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キャッシュフローからみた経営判断のポイント(4)利益計画の作成

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 設例による利益計画

 では、設例を使って短期利益計画を作成してみることにする。
 ㈱M社は輸入雑貨販売業を営んでいる。長引く不況のために様々な経費削減を行い、特に役員報酬はもちろんのこと従業員の給与は、経営状態が良好なときに比べて、かなり減少している状態である。このような状況において、なんとか経営安全率を20%台に保ってきている。
 この度、景気回復の兆しが見えてきたので、役員報酬や従業員の給与の増額を試みたいと願っている。また、お店のリフォームや店舗の拡大などにも着手することも視野に入れている。

①現状分析

M社の直近の損益状況は次のとおりである。
 実績売上高2,000万円、
 変動費900万円、
 限益利益1,100万円、
 固定費880万円(固定費の中身は説明の都合上、給与と減価償却費、支払利息にしてある。)、
 営業利益220万円、
 経常利益220万円、
 限界利益率55%、
 損益分岐点は1,600万円(固定費880万円÷限界利益率55%)、
 経営安全率20%となっている。

②一般経済情勢・業界動向などを考慮

 ㈱M社は、競争相手が多く、まさに群雄割拠の時代の渦中にある。今までも、競争相手と歩調を合わせた売上単価を設定してきた。来期は、大手競争相手の企業が営業マンを増員し、しかも売上単価をさらに引き下げた販売戦略を行なうという情報が入っている。 
 このような状況では㈱M社も営業マンを増員し、新たな販売戦略を立て、来期は当期の1.5倍の売上高となる兆しが出てきたところである。ただし、大手競争相手との関係もあり、来期は売上単価が当期の単価よりも4%低くなるであろうという認識と、円安の経済情勢を考慮すれば、変動費は4%高くなることも否めないという認識をもっている。そこで、㈱M社は、図表2にあるように、売上単価と変動費が増減する際の損益分岐点を算出する公(CとF)を使って、来期の採算点を計算することになった。
 来期の固定費は、役員報酬や従業員の給与の増額とお店のリフォームの費用と支払利息などを含み、1,230万円と予測した。
 この金額を公式の分子の金額とする。次に、公式の分母にある当期の実績売上高2000万円を4%値下げにするために、実績売上高2,000万円(1-0.04)とすることになる。そして、公式の分母にある実績変動費900万円を4%値上げにするために、変動費900万円(1+0.04)とすることになる。この結果、分母の数値は0.5125となるので、この率で分子の金額1,230万円を割ると、損益分岐点が2,400万円と計算される。

 

 

③目標利益を決める

 企業の最終目的は利益の極大化であるが、㈱M社も来期の目標経常利益を307万5,000円と考えている。この場合には、一定額の経常利益を得るために、必要な売上高を算出する公式(B)を使うことになる。得たい経常利益である307万5,000円を固定費1,230万円に加えて公式の分子の金額として計算することになる。固定費1,230万円+目標経常利益307万5,000円÷限界利益率0.5125となり、計算結果は、経常利益を得るのに必要な売上高が3,000万円となる。

④売上高や各種費用に関する方針を決める

 変動費と固定費については前述のとおりで、他の費用は特に変化を考えてはいない。
 売上高に関しては、来期は当期の1.5倍を見込める見通しが立っているので、③で計算した必要売上高は実現可能なものとなる。

⑤年間利益計画書を作成

 図表3を見よう。これは、今までに計算してきた金額を年間予想利益計画書に表現したものである。
 この表の左には売上高・変動費・固定費などの各名称を示す科目が表示されている。その右脇には、来期予想売上高3,000万円を100%とした場合の各科目の%が表示される。そして、その右脇には、今まで計算をしてきた各科目の金額が表示される。
 まず、売上高は3,000万円で100%、
    変動費は1,462万5,000円で48.75%、
    限界利益は1,537万5,000円(売上高3,000万円-変動費1,462万5,000円)で51.25%、
    固定費は1,230万円で41%、営業利益は310万円で10.33%、
    経常利益は307万5,000円で10.25%、そして損益分岐点は2400万円で80%と表示する。
    経営安全率は20%と表示する。

 

 

⑥月次利益計画書を作成

 年間利益計画を立てた後は、月次利益計画を立てることになる。この場合には、自社の月別の販売傾向をつかみ、季節変動指数を算出する作業が必要となる。
 図表4を見よう。

 これは、季節変動指数の算出の仕方を説明したものである。
  ①3年間の各月ごとの合計を計算する。
  ②各月の合計を3で割って、各月ごとの平均値を計算する。
  ③月ごとの平均値を合計して、12で割って年平均値を計算する。
  ④各月の平均値を年平均値で割って、季節変動指数を計算する。

 

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